ホテル編
これまで”決算を見る”シリーズ「基本編」と「サブスク編」を紹介してきました。ここでは更にテーマ別に出てくる特有のポイントを紹介していこうと思います。今回はホテルや宿泊施設をビジネスにしている企業の決算をテーマにしました。ポイントを読み解く力が付けばさらに決算書を見た時の評価が変わってきますので是非ご覧ください。
注目すべきは3点
旅行関連銘柄でホテルや宿泊施設関連の決算を見ることもあると思います。EPSや売上高だけでなく次の項目にも注目してみると実際の客室の稼働率・販売状況が見えてきます。投資判断する上で欠かせない部分となり、この業界にとって重要な指標になります。
ADR(Average Daily Rate)
客室平均単価のこと。
(実際に販売できた客室の平均単価であり、売れなかった客室は含まれていません。)
ADR(客室平均単価)=売り上げ合計額 ÷ 販売客室数
(例)
売り上げ合計額:$2000
販売客室数:50室
とした場合、ADRは$40となります(1室あたり平均$40で売れたということ)
ホテルの立地や客室グレード、プランによって販売価格がバラバラなので、このようにADRで平均単価を算出して分かりやすくします。
OCC(Occupancy Ratio)
客室稼働率のこと。
OCC(客室稼働率) = 販売できた客室数 ÷ 販売可能な全客室数
(例)
100室販売しているホテルが、実際に50室販売できたとしたら、OCCは50%となります。
旅行行楽シーズンになるとOCCは高くなり、オフシーズンになると低くなる傾向があります。
RevPAR(Revenue Per Available Room)
販売可能客室数の平均単価のこと。レヴパーと読みます。
(ADRとは違い、売れなかった客室も含まれています)
RevPAR = OCC(客室稼働率) × ADR(平均客室単価)
(例)
OCC(客室稼働率)が50%で、ADR(客室平均単価)が$40の場合、RevPARは$20となります。
一番注目すべき項目がこのRevPARになります。ホテルなど客室を販売している業種の企業の決算には必ずRevPARの値が発表されていますので、ここを見るだけで状況がぱっと見で分かるようになり便利な指標です。
通常、ADRを上げようとするとOCCは下がり、OCCを上げようとするとADRは下がります。ADRとOCCは反比例の関係にあります。例をあげると、「客室の値段を上げたらなかなか売れなくなって稼働率が下がった、逆に客室の値段を下げたら沢山売れて稼働率が上がった」という具合です。
このようにADRとOCCだけでは収益性を見るには不十分であるため、ホテルの経営状態や収益性を見るにはADRとOCCを掛け合わせたRevPARという指標を使うのが一般的です。ADRとは違い、売れなかった客室の損失分も含めた客室の平均単価が分かる値なので、経営状況や収益性を大まかに判断することができるからです。
下記はヒルトン(HLT)の2021年Q2の決算書を抜粋した画像です。2020年がコロナでやられてしまっているので、一般的な日常的な数値になってないので良い例とはいえないのですが、このようにOCC、ADR、RevPARは出ています。
試しに、1行目(U.S.)の部分で見てみましょう。今期のOCCは63.7%ですね。低いですねぇ・・ほぼ半分くらいは空室だという事が分かります。前年同期比では+39.2%で増加していますが、2020年はコロナで旅行や出張はできていなかったのであまり比較してもしょうがないですね。この場合、この画像には出てませんが、比較するならコロナ前の2019年比較で判断するといいと思います。ADRも同じ感じで見ていくといいと思います。
時間短縮したい人は、OCCもADRもすっ飛ばしてRevPARだけ見るのも良いと思います、+233.6%というとんでもない数字が出ていますが、コロナ期比較なので当然と言えば当然です。
他のホテル銘柄ハイアット(H)や、マリオット(MAR)などの競合他社と比較する時にもRevPARを用いるとで簡単に比較できます。
このようにホテルや宿泊施設をビジネスにしている企業はRevPARを見て経営業況/収益性が良くなっている、悪くなっているという事が数字で可視化できますので是非投資判断材料にしてみて下さい。
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