サブスクとは
サブスクリプション(Subscription)の略語。どういうものかというと定額制/継続課金サービスのこと。身近なものでいえばNetflixやHuluなどの定額動画配信サービス、Amazonのプライム、マイクロソフトのO365などを指します。サブスク型企業と言えばSaaS企業のクラウドサービスが主流でしたが、近年ではレストラン、車、家具、食品など多業種に渡りサブスクサービスが存在してきています。元々サブスク型のビジネスをしていなかった企業もどんどんサブスク化してきています。「売ったら終わり」から「売ってからが始まり」に変化してきています。今後更に増えていくことでしょう。
サブスク化のメリット・デメリット
■サービス提供側
<メリット>
・継続的に安定した収入が得られる
・毎月の売り上げ予想がしやすい
・売り切りではないので利用データなどからサービスの改善や顧客満足度を上げやすい
<デメリット>
・フリーミアム(Freemium)がある ※FreeとPremiumを合わせた造語
正式に契約されるまでの無料お試し期間のこと、サービスを知ってもらう為に行うとはいえ無料期間にも無料でサービス提供をしなくてはならない
・ビジネス開始したばかりだと契約顧客数が少ないので売り上げが伸びてこない
・サービスの提供、改善を継続していかなければならない
■サービス利用側(企業や個人)
<メリット>
・初期費用、導入コストを抑えることができる
・管理コストが減る
・フリーミアムで無料で試してから契約を決めることができる
・利用したくなくなったら解約ができる
<デメリット>
・利用しなくても料金が発生する
・契約期間中の中途解約は違約金が発生する場合がある
以下の本はサブスクに関して詳しく書かれた本です。おすすめです。
決算の見方
決算の見方が分からない方は、先に以下の記事を読んでみて下さい。
基本的な決算の見方は同じですが、いくつか注意点があります。
「売ったら終わり」の様な従来型企業の場合は、売ったらその分だけお金が入る。例えばソフトウェアの1年ライセンスを売ったとしたら1年分の売上が入る。
しかし、サブスクの場合は1年の契約を取れたとしても売り上げは毎月の支払になるので1/12(1年契約で100万ドル売り上げる契約だとしても、12か月で割った1か月分(8.33万ドル)しか入ってこない)の料金が毎月入ってくることになる。つまり四半期決算では3か月分の売上高しか計上できないので見た目の数字に派手さがない。
逆に前者の売り切り企業だと1年ライセンスという1年分の売上がその四半期決算に計上できてしまう為、この点を理解しないまま単純比較するとサブスクのほうがちっぽけで地味な数字にみえてしまう。
この規模感を分かりやすくする為に、サブスク提供企業の決算ではARR(Annual Recurring Revenue)という指標が出されることが多いです。これは年率換算したサブスクだけの売上を表します、単発で売り上げた製品やサービスは含まれません。日本語では年額経常収益や年間定額収益などと呼ばれています。
同様に月単位のMRR(Monthly Recurring Revenue)という指標もよく出てきます。ARRを月単位にしたものです。
サブスクで使われる様々な指標
サブスクで使われる指標というのは沢山存在しているので、よく出てくるものや主要なものをいくつか上げました。企業やサービス内容によっても大分変ってくることがあります。その中でもARRやMRRというのは高頻度で出てくる指標になるので覚えておくとよいでしょう。また「Churn(解約)」という単語がくっついている指標は解約を意味する言葉なのでこの単語も覚えておくとよいと思います。
・ARR(Annual Recurring Revenue)
年間定額収益。年率換算したサブスクだけの売上を表します。単発で売り上げた製品やサービスは含まれません。「前期ARR+新規ARR+アップグレード分-解約ARR-ダウングレード分」で計算するか、「MMR×12」で計算する
・ARPU(Average Revenue Per User)
1ユーザー当たりの平均売上(平均顧客単価)。「売上額÷顧客数」
・MRR(Monthly Recurring Revenue)
月間定額収益。ARRを月単位にしたもの。「ARR÷12」
・NRR(Net Revenue Retention)
売上継続率。前回に比べて解約やダウングレードなどが無く全く同じ状態で100%。当然数字が高いほど良い意味合いになる。
・Churn Rate
解約率。解約した顧客の割合のこと。顧客数ベース(Customer Churn Rate)と収益ベース(Revenue Churn Rate)の2種類がある。
・LTV(Lifetime Value)
顧客生涯価値。取引開始から終了までに得られる総額利益。「単価×頻度×契約期間」で計算するか、「ARPU×契約期間」で計算する。
・RPO(Remaining Performance Obligation)
契約を獲得したが、まだ未計上の売上(これから入ってくる売上の事)
一度顧客になると離れにくいサービスを提供している企業は強い
サブスク企業は顧客数が売上に直結してくるビジネスモデルなので顧客数はとても重要になってきます。その中で一度契約してしまえばそう簡単に解約できないようなサービスは強みがあります。以下は一例です。
VEEV(Veeva Systems, Inc./ヴィーヴァ・システムズ)
製薬会社向けCRM(顧客管理システム、営業支援)をクラウドベースで提供。これまでペーパーワークだったものをオンライン化したサービス。製薬会社向けに特化したプラットフォームの提供で契約した後に解約する理由が殆どないことから解約リスクは少ない。
ZM(Zoom Video Communications/ズームビデオ)
Covid-19の影響による世界パンデミック時に活躍したビデオコミュニケーションサービス(オンライン会議システム)を提供している企業。パンデミック収束したらZoomは不要という声も耳にするが、無駄な出張を減らすことが出来る(コスト削減)ことや、顧客がZoomを利用していたらこちらも持っていなくてはならないなどの理由で解約リスクは低いと考える。
身近なところで言えば「LINE」みたいに周りが持ってるからとりあえず持ってないといけない感覚にも近いと思います。
以上、サブスク企業の決算を読む際や企業分析の参考にしてみて下さい。